2024年3月8日

【医師コラム】肌の老化はどうして起こる?そのしくみと始めやすいエイジングケアを紹介

健康な肌の方にも敏感肌の方にも必ず訪れる「老化」。シミやしわなどのお悩みに対して積極的にケアしている方も少なくありませんが、肌トラブルが起こりやすい敏感肌の方はどのようなケアをすればよいでしょうか。今回は、ふくなが皮膚科の福永 真未先生に敏感肌のエイジングケアについてご解説いただきました。

肌の老化は大きく2種類

肌(皮膚)の老化には加齢による「自然(内因性)老化」と、紫外線の影響による「光(外因性)老化」の2種類があります。

まず自然老化は、他の臓器と同じく、ゆっくりですが確実に現れてきます。皮膚は薄く弾力が少なくなり、傷つきやすく治りにくい肌になっていきます。もともと色白で皮膚が薄い方は、この自然老化現象がやや早く、実感しやすいとも言えます。

一方で光老化は、以前は「自然老化を加速させるもの」と考えられていましたが、最近では自然老化とは全く異なるしくみで肌の変化をもたらす現象と理解されています。光老化では、紫外線の影響で肌を支える柱となるコラーゲンが破壊され、しなやかさを生み出すエラスチンが変性してしまいます。

その結果、大きなしわが生み出され、皮膚は厚くゴワゴワした手触りに変化します。肌の老化現象の8割が光老化によるものと考えられていて、特にお顔にみられるシミやしわ、たるみ、老人性いぼ(脂漏性角化症)などは紫外線による影響が大きいとされています。

ただし、光老化は予防が可能であり、適切なスキンケアを行うことである程度までは「回復可能」な変化であることもわかってきています。

エイジングケアの第一歩は「紫外線」と「摩擦」への対策

エイジングケアのはじめの一歩として、まずは「紫外線対策」をおすすめします。特に、エイジングのサインが気になってきたら「UVA」に注意が必要です。

日焼けなどの皮膚色の変化がUVBによって引き起こされているのに対して、UVAの影響は肌の奥深く、「真皮」といわれる層に及びます。UVAによる変化は、UVBのように目で見てわかるものではありませんが、そのエネルギーは窓ガラスなどを通過して肌の奥に届くため、屋内で過ごす日も日焼け止めを毎日塗ることがとても大切です。

日焼け止めを選ぶ際は、UVBの指標である「SPF値」を気にすることが多いですが、これからはぜひUVAの指標となる「PA値」を参考にしてみてください。PA値は4段階の「+」マークで表され、数が多いほど効果が高くなります。ぜひ日焼け止め選びの参考になさってください。一日室内で過ごす場合は、ファンデーションや化粧下地に日焼け止め成分が配合されるアイテムを選ぶとよいでしょう。

また、エイジングケアにおいては紫外線と同じくらい「摩擦」に注意が必要です。肌は外的刺激に対する防御反応として色素沈着を起こしたり、角質を厚くしたりする性質があります。特に敏感肌の人は肌表面のバリア機能が低下しており、外的刺激を受けると赤み・ヒリヒリなどの炎症を起こしやすい状態になっています。

毎日の洗顔は泡立ちのよい洗顔料を用いて、肌をこすらないようにやさしく包み込むようにしましょう。洗顔後、タオルで水気をふき取るときも、決してごしごしとこすったりせず、顔をタオルにうずめるように「押しぶき」するように意識してください。

この2点に気を付けるだけで、1年後の肌は見違えるように変わります。エイジングケアの基礎中の基礎、「紫外線」と「摩擦」への対策をぜひ毎日のスキンケアに取り入れてみてください。

ダメージの修復を担う「抗酸化成分」を取り入れるのもおすすめ

紫外線と摩擦対策でエイジングケアの土台が整ったら、次はぜひダメージからの「修復」を担う成分をスキンケアに取り入れてみましょう。

紫外線や摩擦などの外的刺激によるストレスを肌に与えると、肌の奥では活性酸素(フリーラジカル)が発生して酸化し、コラーゲンやエラスチンにダメージを与えて、老化を引き起こします。「抗酸化成分」には、周囲の細胞よりも早く酸化することで、このダメージを先に吸収する作用が期待できます。

たとえば代表的な抗酸化成分には、ビタミンA(レチノール・βカロテンなど)やビタミンCがあります。食事の中で積極的に摂取したい栄養素ですが、肌のアンチエイジングには直接塗って届けることがおすすめです。特にビタミンCにはコラーゲンの生成を促す効果も期待できますし、市販品に配合されていることが多く、取り入れやすい成分です。ただし、ビタミンAやビタミンCは濃度が高くなると乾燥や赤み・皮むけなどの副作用を起こしやすいため、肌の状態を見ながら少しずつ慣れさせていくとよいでしょう。

肌荒れが心配な方は、ビタミンE(トコフェロール)やナイアシンアミドなどがよいかもしれません。ビタミンEは強い抗酸化力を持ちますが、血液循環をよくするため肌荒れ予防にもなり、敏感肌の方も安心して使用できます。また、ナイアシンアミドはもともと体内にも存在する成分で、美白・肌荒れ・しわ改善の3つの効果が認められているマルチな美容有効成分です。肌への刺激が少ないだけでなく、他のどの成分や製品と使っても問題がなく、併用する成分による刺激感や赤みなどの副作用をやわらげてくれるという報告があります。

スキンケア製品を選ぶときはぜひこれらの「抗酸化成分」に着目してみてください。

毎日のエイジングケアで「肌を育てる」を楽しんでみて

「肌の老化はいつか必ず訪れるもの」そんな気持ちで、笑いジワや小さなシミは受け入れつつ、大きなトラブルはしっかり予防していきましょう。日々の紫外線対策と摩擦を避けるスキンケアを意識しながら、毎日のスキンケアに新しく何かひとつ「抗酸化成分」を取り入れてみてはいかがでしょうか。

もちろん自宅でのケアに限界を感じたときは美容医療の力を借りるのも悪くありません。最近では、レーザー治療もお手頃になり、ちょっぴり身近になってきました。

しかし、毎日のスキンケアに勝る「治療」はありません。どうしてよいかわからなくなったときは、ぜひお近くの信頼できる皮膚科医と相談しながら、スキンケアでご自身の肌を一緒に育てていく・・・そんな時間を楽しんでいただければ、皮膚科医冥利につきるというものです。

執筆

福永 真未先生

ふくなが皮膚科 院長
https://fkngderma.jp/

経歴

国立大学法人滋賀医科大学医学部卒業後、同大学皮膚科学講座に入局。彦根市立病院への勤務、滋賀医科大学付属病院での研修を経て、皮膚科専門医資格を取得。彦根市立病院では爪専門外来を開設し、延べ 400 人以上の爪治療に従事。がん治療(化学療法)支援チームおよび院内感染症対策チームでも精力的に活動。その後、京都市内の皮膚科・美容皮膚科クリニック院長を歴任し、令和4年、ふくなが皮膚科を開設、現在に至る。

所属学会

日本皮膚科学会、日本美容皮膚科学会、日本化学療法学会