2023年2月17日

【医師コラム】ヘパリン類似物質の効果とは?敏感肌にも使える成分?

赤ちゃんからお年寄りまでどんな方でも安心して使用できることで知られる「ヘパリン類似物質」。保湿力の高さで人気を集めていますが、具体的にはどのような効果や働きがあるのでしょうか?このコラムでは効果や正しい使い方、さらに敏感肌の方でも使用できるのかなど、気になる疑問を<アルバアレルギークリニック院長の続木 康伸先生>にドクターの観点からご解説いただきました。

ヘパリン類似物質の効果・効能などについて

ヘパリン類似物質配合のクリーム等は、長年医療としては使用されてきましたが、ドクターの認識ではどのようなものでしょうか?

へパリン類似物質は、保湿作用が学術的に証明されている成分で、アトピー性皮膚炎などの肌がデリケートな患者さんに見られる皮脂欠乏症の治療に用いられています。そして、このヘパリン類似物質を主体とする保湿剤は、健康保険の適用も認められていて、長年アトピー性皮膚炎の治療薬としても使われています。
5年以上前になりますが、女性ファッション雑誌などで「処方コスメ(病院でもらえる保湿剤)」として取り上げられるようになると、その保湿力の高さが一般にも広く注目され、社会問題になったほどでした。乾燥肌への保湿成分としては長く効果が認められてきた成分で、現在では、ヘパリン類似物質を含有した保湿剤が化粧品として購入できるようになっています。

ヘパリン類似物質には、大きく分けて「保湿」「血行促進」「抗炎症」の3つの作用があると思いますが、医療の現場では主にどのような効能効果を期待して処方されるのでしょうか?

期待する効果としては「保湿」になります。ヘパリン類似物質には親水性があり、その作用から保湿効果を期待して配合されています。「血行促進」、「抗炎症」の作用もありますが、重要視されているのは、保湿作用です。
そのため、主に肌バリアがデリケートなアトピー性皮膚炎の患者さんに対して使用されています。また、乾燥肌などのドライスキンの状態は、肌の皮脂が少なくなっているため、それを補充する目的で「皮脂欠乏症」と考えられたときに処方されます。

保湿剤との使い分けや使い方について

ワセリンを出すときとヘパリン類似物質を処方するときは、どのように違いますか?

ワセリンに保湿作用はありません。塗布した感触や塗布後のべたつきも強いので、保湿として使用されることはあまりありませんが、ワセリンは水分をはじくため、「バリア」を目的に使われます。ワセリンを塗ることで、肌にバリアを張れるようなイメージです。たとえば、よだれが多い時期の赤ちゃんやお尻かぶれが多い時期の子に、「よだれが付かなければ、肌は荒れないでしょう」といった理由で使われます。なので、ワセリンを使用する部位は限定されていて、全身に使われることは今は少ないです。
これに対して、ヘパリン類似物質は「保湿」を目的に使用されます。よだれが多い時期の赤ちゃんやお尻かぶれが多い時期の子は、もちろん肌も荒れているので、ワセリンと併用されることが一般的です。
このように、ワセリンとヘパリン類似物質では、効果と目的が違います。

ヘパリン類似物質の保湿と他の化粧品の保湿では、どのような違いがありますか?

ヘパリン類似物質の保湿力は、その他の配合成分との兼ね合いで保湿力が違ってきます。そのため、同じヘパリン類似物質を使っていても、保湿効果は製品によって異なりますし、もちろん個人によっても大きく差がでる印象です。
また研究結果でも、ヘパリン類似物質含有製品は使用する日数が伸びるほど、肌の角質層が回復してくることがわかっています。そのため、保湿は自分にあった製品を選ぶことが大切です。

敏感肌の方、アトピー肌の方、赤ちゃん、お年寄りは使用できますか?また、ほかの化粧品との併用は問題ないでしょうか。

もともと病院でもヘパリン類似物質含有の保湿剤は、乾燥肌の方、アトピー肌の方、赤ちゃん、お年寄りに対して使用されています。ヘパリン類似物質が合わない方は珍しく、問題になることはあまりありません。また、一般的な化粧品であれば、他の保湿クリームと併用することもできます。

先生からのアドバイス

ヘパリン類似物質を使用する上で気をつけたほうがいいことやスキンケアのコツがあれば、教えてください。

効果を最大に出すために一番気をつけたいのは、塗布する量です。一番効果を発揮する塗布量は、ティッシュがくっついて落ちないくらいの量です。これはアトピー性皮膚炎など、肌がデリケートな人たちによって実証されています。
一般的に考えられている量よりもはるかに多いのですが、塗布量が少ないと十分な効果が見込めません。また、1日1回で十分な人もいますが、乾燥肌やアトピー肌の人は、1日2回の方がよいです。特に冬の乾燥する時季はなおさらです。

乾燥肌やアトピー性皮膚炎など、敏感肌でお悩みの方は、日常生活でどんな点に気をつければ良いでしょうか?

大切なのは「毎日のスキンケアを習慣にすること」です。たとえば、スキンケアで肌の状態が良くなったとしても、すぐに保湿剤を塗るのをやめてしまったり、量を減らして薄く塗ったりしてしまうとすぐに悪化します。とくに保湿剤の量が少ない場合には、少量を無理やりのばさないといけないのでかえって時間がかかりますし、肌が引っ張られてしまい、シワやタルミの原因になるという説もあります。
なかには、「ヘパリン類似物質を長期間使っても大丈夫?」「眼の周りは避けたほうがいい?」などと心配される方がいるかもしれませんが、むしろゆらぎ肌の方は毎日使用することが大切です。 またヘパリン類似物質は、通常保湿をする部位であれば、塗っていけない部位はないので、顔や眼の周囲などにも塗布できます。

そして、美しい肌を維持するためには、ストレスをためないことも非常に重要です。たとえば、毎日決まった時間に動画やドラマを見ながらスキンケアをすると、「自分の体を労わっている私最高!」というような感じで気分が盛り上がって良いでしょう。ハーブティーでリラックスするのも良いですね。

このように、スキンケアを習慣にし、十分な量の保湿剤を塗ること、そしてストレスをためないようにすることが、肌を美しく保つポイントです。

執筆

執筆いただいた医師 続木 康伸先生

医師、歯科医師。
アルバアレルギークリニック院長
皮膚疾患の治療にもあたられており、アトピー性皮膚炎やアレルギー疾患の患者だけでなく、敏感肌やニキビなど皮膚症状の治療を目的に、全国各地から多数の患者さんが来院しています。
https://alba-allergy-clinic.com/
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経歴

岩手医科大学歯学部卒業後、同医学部卒業。札幌徳洲会病院小児科・アレルギー科医師、北海道教育庁健康保健体育局アレルギー疾患教育担当などを歴任。2017年札幌徳洲会病院アレルギー科医長就任。2020年アルバアレルギークリニック開院。

所属学会

日本花粉学会評議員、The European Academy of Allergy and Clinical Immunology(ヨーロッパアレルギー・臨床免疫学会)、American College of Allergy, Asthma, & Immunology(アメリカアレルギー・喘息・免疫学会)、日本小児アレルギー学会、日本医学脱毛学会、日本美容皮膚科学会、日本痤瘡研究会、抗原研究会、人と動物のアレルギー研究会(主催)。